2019/01/29
「今年は、しゃがむ年にする」
シーズン前のラウンドテーブルで羽生社長が放ったこの一言。要は、苦しい戦いになるけどJ1昇格を絶対的目標にはせず、若手を中心に起用して、育てながら戦っていくということ。当時は、「ヴェルディユースは最強だから」みたいな風潮もあって、「まぁそれも面白いかもね」って思ってましたが、しゃがみすぎてそのまま立てなくなる間際までいくとは、正直思っていませんでした……。
編成としては、西紀寛や飯尾一慶といった前年の絶対的主力を「若手にフタをしたくなかった」という理由で切り、高原直泰は契約更新をしたものの開幕からベンチを外れ、3月にSC相模原へ移籍。森勇介もほぼベンチかベンチ外の序盤戦を経て、夏にFC岐阜へ。
その一方で、久々に胸スポンサーなしでシーズンがはじまり、秋に「緑の心臓」がくるまではアキ状態が続いたように、資金面でも大きく苦しみ、中島翔哉をFC東京に放出(そのままカターレ富山にレンタル)、吉野恭平もサンフレッチェ広島へ移籍(ただし即レンタルでそのままヴェルディに在籍、夏に広島へ)するなど、“お金のために選手を売る”ことをまだまだやらなければならない年でした。
開幕戦のメンバーには、安西幸輝、高木大輔、菅嶋弘希といったルーキーが並び、2年目の吉野、前田直輝もスタメンに。ベンチには澤井直人や安在和樹。平本一樹や中後雅喜、そしてこの年にヴェルディに帰ってきた田村直也が名を連ねたものの、平均年齢は20代前半という非常に若い布陣でスタート。
結果は、松本山雅に1-3の完敗。前田直輝の同点ゴールで一時は盛り上がりを見せたものの、この年に昇格を果たす松本に実力差をつけられる結果となってしまいました。
その後は、とにかく苦しい。
3月のホーム長崎戦で1-5。翌週のアウェイ富山でやっとシーズン初勝利を挙げ、ゴールデンウィークの讃岐戦でやっと2勝目。とにかく、リーグ下位のチームにしか勝てない。6月の駒沢ではアビスパにまた0-5の敗戦…。
そんななか、7月のアウェイジュビロ戦で、竜士と南のゴールで奇跡的な勝利。あのときは、涙するサポーターもいましたね。
とはいえ、調子が上向くことはいっさいなく、20位くらいが定位置で残留争いの渦中に。9月、残留を争う讃岐に讃岐に敗れたところで本格的に“ヤバイ”という空気となり、ついに三浦泰年監督の解任を決意。ユースを率いていた冨樫剛一が代打で監督に就任することに。
冨樫さん就任後も決して良くなったというわけではないものの、若手の中に平本や中後などベテランを積極的に起用する方向で粘り強く勝ち点を拾っていき、11戦のなかで6つのドローで勝ち点を積み重ねたことでなんとか20位で残留。アウェイ福岡戦だったかな、0-0で試合が進むなか、終盤に平本の右足のクロスに、中盤から全速力で駆け上がってきた中後がゴール前に飛び込んで泥臭くヘッドでゴールを奪い1-0の勝利。足元のテクニックや長短の精度高いパスが特徴の中後だけど、そうやってベテランが最後まで走り抜く姿がギリギリのチームを支えていたように思います。
駒沢での熊本戦も、やはり後半ロスタイムに平本がゴールに押し込んで1-0勝利。冨樫体制3勝目となった最終節のアウェイ山雅戦でも、北脇が後半87分に勝ち越しゴールを決めて2-1で勝利するなど、最後の最後の気持ちの強さとか、チームの一体感が一つのゴールを生むシーンが多かったですね。
結果、20位。決して褒められた成績ではないし、本当に本当に苦しかったシーズン。
でもそれゆえに、一つの勝利、一つのゴール、一つのプレーの重みと大切さを改めて実感したシーズンでもありました。勝利するって、こんなに嬉しいことなんだ…って。
ピッチ面では、ダブルアンザイが両翼の主力となり、井林章、澤井直人、大輔、直輝らがシーズンを通して戦い、翌年以降の布石となった。謎の外国人として加入したニウドも、結局このシーズンのみで退団することになるも異彩を放つ活躍でレギュラーポジションをつかむなど、楽しみもあったシーズンではありました。ただ残念だったのは、菅嶋。この年はあれだけ多くの出場機会を経て、チャンスに絡みながらも決めきれず、結局、その後も無得点のままプロの舞台を去ることになってしまいました。あの時に、一つでもゴールが決まっていれば彼のサッカー人生も何か違ったんじゃないかな…(で、いま何してるんだろ)。
ゴールという意味では、常盤聡もインパクトのある選手でした。抜群の身体能力を武器に、超ロングシュートやアクロバティックなシュートなど派手なゴールを重ねたものの、”簡単なシュート”を外す場面も多く、なかなか数字上の結果を残すことができずにこの年で退団。個人的には、好きな選手だったんですけどね。
腰が砕けそうになるくらいしゃがんだけど、結果として、翌シーズンに上々の成績を残したことで、それはある種の成功となるのでした